えちょ記

語らないブログ

ブラックホールの情報は失われない直感的な理由

ブラックホールが情報を奪うのかどうかについては、相対性理論量子力学の間で喧々諤々の論争があった(今もつづいている)わけです。ですが、ぶっちゃけると、ブラックホールに落ちて行く物体を外から観測している状況だけを考えていれば、情報が失われないことはほぼ自明だったりします。あ、物理学的な難しい数学の話とかは無視して、直感的な話ですよ?

アリスはエントロピーを背負って落ちていく

アリスはボブが大嫌い(ぉ)。永遠に別れたかった彼女は、あるブラックホールに旅立ちました。アリスの時計では、彼女は2010/1/1丁度に、事象の地平線をまたぎます。熱力学の第二法則によりエントロピーは常に増大しますが、少なくとも事象の地平線を超えた時、アリスの時間は外から見て完全に止まるわけですから、結果的にアリスがブラックホールに持ち込むエントロピーは、1/1になる瞬間までの量になります。1/1を過ぎてアリスが発生させるエントロピーは、結果的に事象の地平線を超えることはありませんから、外部観測者にとっては関係の無い出来事となります。

とある時空の無限観測者(ストーカー)、ボブが見るもの

一方ボブには、無限の寿命を持つというストーカーには最適な(最悪な)能力が備わっています。ブラックホールに飛び込む勇気はありませんが、かといってアリスを忘れることはできません。涙ながらにアリスを見つめるボブは、事象の地平に近づく彼女の動きがどんどん遅く、そして赤方偏移していく様をただ眺めるしかありませんでした。

彼女の姿は時空の歪の影響でどんどん薄っぺらく、赤く、暗くなっていきます。そしてついには観測不可能な状態になって消えてしまうのです。‥‥消えてしまうのですか?

無限の時間があれば、1/1までの姿を見続けることができる

たしかに暗く、波長も長く、動きもどんどん遅くなります。しかし外から見ている限り、彼女の時間は止まっていくことは確かですが、消えるわけではありません。非常に暗くはなりますが、しかしそれでも、彼女は見えています。彼女が持つ情報は、少なくとも1/1になるまでの情報については取り出すことが可能な状態です。無限の時間を使えば、彼女の1/1までは再現できます。少なくとも、彼女が見える側(背中の姿)は再現できますねぇ。‥‥でも、彼女は振り向かなかった。顔はもう見れないのでしょうか?

薄っぺらなアリス

重力の効果により、外から見た時のアリスは事象の地平線に対してどんどん薄く潰れていきます。重力の効果で原子核を超えてアリスが潰れてしまった(失礼)とき、量子力学の効果が発動してきます。見えないはずの彼女の顔の側の原子が発する光が、トンネル効果のために彼女自身の体に遮られることなく、ボブの側にも飛んでくるのです。つまりアリスは、どんどん裏と表と内臓が合成されたような(さらに失礼)姿でボブに全てを(さらにさらに失礼)晒してしまうことになりますね。なんということでしょう、地平を超えたアリスには知る由もありませんが、彼女の1/1までのすべての情報は、無限の時間を持つボブに曝け出してしまう事になってしまうのです。

ブラックホールの蒸発は、事象の地平までの出来事を悠久の時で再生する

結果的にボブは、アリスの意に反して(特に1/1直前のアリスについては)アリスのすべての情報を得ることが出来る立場にあると言えます。さて、実際に再現出来るだけの情報をすべて得るのにかかる時間がどれだけかかるのかというと、これはいわゆる「ホーキング放射」にかかる時間と等価です。というか、アリスの姿のほとんど全てはホーキング放射そのものによって得ることになります。

ここまで直感的な話だけで進めましたが、基本的にはこの理解で正しいはず、です。情報の損失の問題については、少なくとも事象の地平に飛び込むまでのエントロピーが再現できればいいのですから、「外からどう見えるのか」だけを冷静に思考実験してみればブラックホール関係の情報損失の矛盾は解決できるはずです。

ホーキング放射などの話がこんがらがってくるのは、「事象の地平線」そのものを論じているからだと個人的には考えています。あと多分「地平を超えたあとのアリスのエントロピー増加分」は無視すべきですが、一緒に考えている。外から見た時にアリスは永遠に事象の地平を越えないのですから、越えない前提でどう見えるか、それだけを検討すべきです。蒸発にかかる時間の計算としては等価ですが、事象としてのホーキング放射は、現実には起こっていないと考えています‥‥。

なんて偉そうに言ってますが〜、相変わらずオラの解釈は超訳だらけなので鵜呑みにしないでくださいね〜ぇ。まあ軽い読み物、ということで。こんなことばっかり考えている本物の物理学者様達は、もっともっとえらくすごく尊敬すべき人たちだらけなのですよ!