えちょ記

語らないブログ

アナタハ、ミライヲ、シッテイル

コンピューターの発展は目覚しく、もはや人間の思考能力をはるかに超えた領域に踏み込んでいます。なのに、コンピューターは知能を持っていない。「人工知能」という学術領域でさまざまな研究がされているのにもかかわらず、いまだコンピューターは車の運転ひとつ出来ない状態。‥‥どうして?

とゆーことで、面白い本を読んだのでご紹介。

考える脳 考えるコンピューター

考える脳 考えるコンピューター

著者はあのパームOSの生みの親、ジェフ・ホーキンス。彼は脳の研究に費やす資金を稼ぐためにビジネスを行っていたそうです。この本ではこれまでの「人工」知能の研究と挫折の歴史を彼の視点で追いつつ、「脳」の構造の研究成果から、その「真の知能」が生まれるロジックを鋭い仮説を交え解きほぐそうとしています。

「知能とは、これまでの経験から未来を予測する事」。私の無茶な要約ですが(^^;、そう結論付けていると感じました。

1階の玄関から2階の自室に向かう。人にとって当たり前の事が、コンピューターには出来ない。プログラマー的に考えると、「まずは視覚センサーを」「歩くときのモーターの動かし方は?」「扉があったら開ける必要が」「そもそも扉をどうやって認識する?」などなど。‥‥ちょっと想像できないほど途方の無い処理です(ーー;。

10億回計算できるコンピュータが出来ない、まるで魔法な行動を、1秒間にわずか100個程度の信号しか処理できないニューロンたちどうやって解いているのか?

その仕組みの真髄は流石にこの場で言い切れません。そこはこの本に詳しく説明があります。もう目からうろこが落ちるようなロジックでいっぱいです。後2−3回読み直さないと全貌は掴めそうにないです(^^;

閑話休題。この本によると重要なのは「記憶のシーケンスと階層構造」です。今、Aという現象が起こっている。すると次に起こる現象はBのはずだ‥‥と、過去の経験が詰め込まれた連想記憶の引出しから、次に起こることを予想する。

未来に起こることを、過去の経験と今起こっている事から予想し、実現するのが「知能」なんですね。そしてその予想と、「今」の状況を常に比較し、その先の行動に反映していくんです。

そしてその未来を、複数の階層で予想します。下位の階層は例えば映像なら画素の違いで反応するため、頻繁に予想が外れます。外れた予想は上位階層に伝えられます。しかし上位のレベルでは例えば「さくらが火をつけている」というレベルで認識しているため、その行動は十分予想されています。

ある現象が発生していることが下位から上位に伝えられます。それと同時に、上位からは「次はこうなるはずだ」という情報が伝えられます。

「今起きていること」と「次に起こるだろうこと」がせめぎあい、どこかで一致する。意識はそこで生まれ、貴方が次に何をするべきかが決まるんです。

つまり私たちには未来が見えている。何気ない行動をしているとき、貴方に見えているのは今ではなく、少し先の未来。

歩いていれば、振っている手が視界に入りますが、実際に見える前に貴方はそこに手を見ている。足が地面に触れる音を、貴方は聞こえる前に感じている。その未来を実現するために貴方は行動しているのですから。

新皮質と言う「未来予想装置」は、哺乳類にだけ備わった素晴らしい力です。そして人間は新皮質の発達に伴い、より遠くの未来を見ることが出来るようになりました。これって素晴らしいですよね。

想像して、創造する。この本を読んだ人が(もちろん私も含めて)、いつか「真の知能」を実現できる事を期待しています。小難しい本ではありますが、興味のある方は是非どうぞ。