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GoogleはIE9ショックを切り返せるか?

先日のIE9プレビュー版の発表で、MSは非常に興味深いプレゼンを行った。フルスペックSVGのハードウェアアクセラレーション実行だ。これは「インタラクティブ要素はCanvasで」という流れを作りたかったWebkit陣営にとって大きな鉄槌となる一撃だと感じた。なぜなら、SVGアクセラレーションはCanvasで行えることを「よりHTML的に」実現する手段であり、Canvas実装の正当性そのものを揺るがしかねないからだ。

Canvasハイパーテキストではない

SVGは「文書」であり、動かずともデータそのものドキュメントとして成立する。しかしながらCanvasはあくまで「キャンバス」であり、そこに何が書かれているのか、文書の実体はJavaScriptのコードに埋もれるほかない。HTMLの第1目的が「ハイパーテキストの表現」である以上、CanvasはWebアプリを実現するための道具ではあっても、「ハイパーテキスト」には成り得ない。いわばハイブリット車の技術のごとく、正統進化の技術が十分な実用性を持ったときにその座を譲ることになる技術と言える。

SVG「文書」である意義

一方のSVGは電気自動車の如く、「ベクターグラフィックスの標準」として正統進化が期待されていながら今ひとつマイナーであり続けた。ベクターグラフィックスは処理が重く、インタラクティブなアプリを組み立てる道具としては使うのが難しかったためだ。Webkit陣営がCanvasに目をつけたのは十分早くなったJavaScriptベンチマークとして非常に有用だったためだが、どうしてもハードウェアアクセラレーションが必要となる要素を、Canvasという「窓の中」に限定させたいという狙いもあっただろう。

「標準」とは何か?

そもそも、WebkitSVG対応は不完全であり、未対応で放置されたところも多い歯抜けの状態。例えばこのページ(svg文書)Firefoxでは表示されるが、Google Chrome 5では真っ白の枠だけ。結局のところ自分たちが定めた「標準」の実装だけが最優先され、宣伝効果の薄い過去の規格については優先度が落とされているのが実情といえる。

そんな中、特にWebkit陣営はCanvasと「HTML5」を執拗に結びつけ、MSに対し「Canvasに対応せよ!」と迫ることで自らの正当性を主張してきた。だからこそCanvasへの固執が弱点だった。MSはWebkit陣営のウィークポイントを正確に見抜き、標準対応という競争を自分たちのフィールドに引き戻したのだ。

OSに頼れないジレンマ

同じwebkit陣営でも、AppleよりGoogleの方が影響が大きい。同じくOS固有のQuartzに頼ることができるSafariと異なり、マルチプラットフォーム前提のChromeはOS描画に頼りすぎると移植性を損なう。WebGL対応に限定したDirect3D変換プロジェクトANGELを立ち上げたGoogleだが、フル画面のSVGアクセラレーションに適用するには役不足だろう。ベクトルグラフィックの高速化にはGPUを巻き込んだ最適化が不可欠だ。

MSは「標準規格」をGPUを利用して劇的な速度で実行する事で自らのOS支配を取り戻す戦略に出た。OS支配を断ち切りたいGoogleは、今回の戦いにどう切り返すのか?